洋の文化たるスーツ作りの技術とは、どのようなものなのかご紹介いたします。
1.体の曲面をなぞった服  円い服ほど作るのが難しい
 DOMENICO CARACENI派の服は、人体の曲線をなぞった複雑な立体形を、硬い芯を使わずソフトに仕上げて行くことに大きな特徴があります。
 人体は複雑な曲面の組立てで、大づかみには圧しつぶした円筒形と言えます。服も当然人体をなぞって円く作らなければ美しくComfotableな良い服は出来ません。
 ところが、素材は表地、芯地、裏地共に平面です。平面の材料で複雑な曲面を作っていくのは、円さが増すほど困難さが逓増します。


容易
困難
極めて困難

 スーツはしばしば布で作る彫刻であると表現されます。上記のように人体をなぞった複雑な曲線を持った立方体に仕立て上げて行く様を表現したものですが、同じ彫刻でも上っ面の、中が空っぽな形だけ作ったものと、中から盛り出る力を感じさせるものとでは、我々の受ける感銘は随分違います。スーツの場合も彫刻同様、製作者が何らかの強い意志をもって作り上げていくものである以上、その力を感じさせるものが良いスーツと言えるのではないでしょうか。
 ましてや表現力が高く、着やすい円い難度の高い服を作ろうとして失敗すると、もたもたでくしゃくしゃの服になってしまい、収拾がつきません。日本の既製服の場合、この破綻を恐れて、且つまた能率よく生産するために、どんどん要求度を下げて、フラットで大きい服を作ります。それをラインとデザインでごまかすのが一般です。こんなスーツが人々の感銘を呼ぶはずがありません。
 従って製作者の表現力に応えた服を作るためにも、技術が非常に重要な要素となります。
 
体の曲面をなぞると
1, Omero PitはCONCAVE(凹シェイプ)で美しい曲面を作り、余りじわがなく
2, チェストは上下左右にCONVEX(凸シェイプ)で経地の目が通り
3, 下半は半円筒形に成型されCNVEX(凸)でお腹を円く美しく包むように、それでいて作りはあくまで柔らかく成型されています



 これらはプレスで型抜きしたものではありません。パターンと縫製のテクニックによって出してありますので、消失することがありません。人体のフロント各部の凹凸をすんなりなぞっています。
 プレスだけでこの凹凸曲面を形成することは絶対に不可能です。カッティングと縫製の技術で曲面の下地をしっかりと作る事によって、いつまでも形くずれのない美しいシルエットが保たれます。


曲面の下地をしっかり作る作業としての芯据え

その作業が終わった段階で既に円い曲面が出来上がっているパーツ

芯据え後の中間プレス

最終プレス前の製品

―細く見えるが太い袖―
 身体の曲面に沿った円く流麗なボディに釣り合う様に、プラムの袖はすっきりと円く細く見えるように設計されています。太い腕が入るかと心配になるほどですが、着てみると意外にゆとりがあって窮屈でないことがわかります。実は小さくないのです。
 充分に太く大きい袖が、前身頃に対して切口が円に近い形になるよう設計して付けられていますので、側面方向からは細く見えるのです。(通常作られる袖は、身頃に対し押しつぶされた形ですので、太く見える。)
プラムの袖
一般の袖